蜻蛉の手帳

北海道東部を拠点に、昆虫のトンボを中心とした観察記録・写真を掲載しています。 なお、某有名文房具とは一切関係ございません。

 道東に住む友人に誘われて、海浜性の植物を見に行ってきました。

Ezokisuge
 エゾキスゲ

 
 これまでに何度か訪れた海辺に着くと、一面にエゾキスゲが咲き誇っていました。冬の殺風景な時期にしか来たことが無かったので、何とも新鮮な風景です。

Umimidori1
 Umimidori2
 ウミミドリ

 まず教えて貰ったのが、このウミミドリ。教えて貰わない限り、確実に素通りするくらいの小さな花です。サクラソウの仲間という事なのですが、確かによく見れば、小さいながらもサクラソウらしき雰囲気が漂っています。

Akkesisou
 アッケシソウ

 そして、こちらがアッケシソウ。秋口の紅葉した状態が有名ですが、夏場はご覧の通り青々としています。

Ikidaore?
 行き倒れ?


 ちなみに、ウミミドリとアッケシソウの高さは10cmほどなので、撮影時のスタイルはこんな感じでした。友人が撮影しているところを遠目から見て、「これは、行き倒れにしか見えないな」と思いましたが、数分前までは私がこの姿勢でしたし、何よりトンボ撮影の際は大体こんな状態なので、何の問題もありません(謎)

Nogoma
 ノゴマとハマナス

Hamabenkeisou2
ハマベンケイソウ

 特に一押しと教えて貰ったのが、このハマベンケイソウです。名前ぐらいしか聞いた事がなかったのですが、海浜性植物というだけあって、葉が肉厚で独特な雰囲気を醸し出しています。

Hamabenkeisou1

 
 花の形を改めて見ると、某夢の国の作品に登場するプリンセス達が着ているドレス(シンデレラのプリンセスライン的な)の様で、なかなかファンタジーな花です。勧めた理由は違うのかもしれませんが、確かにこれは一押しと言いたくなる花でした。

道東 2019年6月30日 

Shiokara1
Shiokara2
シオカラトンボ♀:羽化

 森の中の水辺で、水際から3メートルほど離れた倒木でシオカラトンボが羽化していました。どんなトンボでも羽化する瞬間は美しいものですが、見慣れたトンボと言えども自然度の高いところで羽化していると絵になります。何より、その意外な行動力には驚かされました。
Hikagenokazura
 ヒカゲノカズラ

Benibanaichiyakusou
ベニバナイチヤクソウ

 前回もミステリアスな花々を紹介しましたが、今回も引き続き少しミステリアスな花(?)を。ヒカゲノカズラはコケの様な見た目に反してシダ植物ですが、胞子枝が燭台の様に見えて特徴的ですし、今回改めて調べてその活用方法の多さに驚きました(人工受粉、血止め、金魚の産卵巣、飾りなど)。
 先日は、エゾカオジロトンボなどの希少性の高いトンボに出会ったばかりで、その生態に更に迫りたいという思いも出てきますが、普段見慣れた生きものでもハッとさせられる瞬間があるので、それは忘れない様にしたいものです。

弟子屈町 2019年6月25日 

Kosanae1
Kosanae2
コサナエ:交尾

 昨年に、コサナエを観察した水辺の様子を見てきました。今年も健在なようで、至るところで交尾や産卵を行なっていました。その中でも、シラカンバの倒木の上に静止していたペアが大人しく、樹皮の色が幸いして、天然のレフ板効果によりくっきりと写りました。
 少し残念だったのが、羽化の時期を逃してしまった事です。それなりの数が発生しているので、少しくらいは羽化に出遅れた個体に巡り会えるかと高を括っていたのがダメでした。これは、また来年の課題としましょう。本州で観察した時もそうでしたが、生息環境が止水域という事も重なり、どことなくミステリアスな雰囲気の漂うトンボだと思います。
Ginryousou
ギンリョウソウ
Ichiyakusou
ジンヨウイチヤクソウ
Ichiyouran
イチヨウラン?

 そろそろ端境期に入ろうかという時期ですが、新緑に遮られた森の下でも、少しミステリアスな花々がひっそりと咲いています。トンボの方も、夏の種が発生し始める頃なので、頭を切り替えて行く必要がありそうです。

弟子屈町 2019年6月19日 

Ezosukasiyuri
エゾスカシユリ

 『リラ冷え』か『蝦夷梅雨』なのか、5月下旬から6月中旬にかけては雨が多く、気温が極端に下がったりと冴えない天気が続きましたが、道端の草むらには初夏の花が咲くようになりました。朝から気持ちよく晴れたこの日、これまで観察を先延ばしにしていた諸々のトンボを拝みに、早朝から車を走らせました。

Moiwasanae
 モイワサナエ♂:ガガンボの一種を捕食

 現地について早々、モイワサナエが現れました。道内では普通に見られるトンボですが、移住してからのこの3年、まともな観察もせずに姿を写真に納めてすらいなかったので、新鮮な気持ちでしばらく眺めました。

Karakanetombo
 カラカネトンボ♂:パトロール飛翔

 目的の水辺について辺りを見回すと、汀の一角でエゾトンボの仲間がホバリングしているのが目にとまりました。その時は、ホソミモリトンボかコエゾトンボかと思って写真を撮り、帰ってからよくよく見れば、なんとカラカネトンボです(現地で見分けがつかなかったのは内緒です、、、)。今回の目当てではなかったのですが、図らずも行動生態の一部を垣間見たので、次への新たな楽しみができました。

 出し惜しみしましたが、今回の最大の目的はこちら! 

Ezokaoziro1
 エゾカオジロトンボ♂

 勘の良い方は、あからさまなタイトルでわかった事と思われますが、道東を代表するトンボと言えば、このエゾカオジロトンボです。初めてその姿を拝めましたが、思っていたよりも小さく、黒い印象を受けました。まずは、無事に見る事が出来たので一安心です。
Ezokaoziro2
エゾカオジロトンボ♂の顔

 名前の通り、顔面(前額部)が白粉を塗った様に白い事が特徴です。『日本のトンボ』に綺麗な写真が掲載されていますが、今回実物を見て、顔だけでなく翅の先端部もわずかに白い事に気がつかされました。やはり、実物を見る事はとても重要ですね。
 ユーラシア大陸には同種が分布していますが、日本では北海道東部の太平洋側、すなわち釧路湿原一帯にしか分布していません。隔離分布という点では、同じく釧路湿原にのみ分布しているキタサンショウウオと似た物を感じますが、広大な釧路湿原にはそれだけの環境包容力があるという事なのでしょうか。

 また、カオジロトンボの仲間は北米大陸などにも複数種が広く分布しているのですが、英語圏でこの仲間を指す通名がタイトルの通りのWhite faceで、文化は違えど印象を受ける部分は同じなのだなと感じます。
 例によって、学生だった2010年にカナダへ行った折に、エゾカオジロトンボとよく似た種を見ていました↓
Hudsonianwhiteface
Hudsonian Whiteface(Leucorrhinia hudsonica)♀
(2010年7月15日 カナダ ナナイモにて)

 見比べてみると、日本のカオジロトンボ・エゾカオジロトンボとかなり似ています。遠く離れた大陸に生息しているトンボの姿形や、その呼び方に共通点があるとロマンを感じますね。

 これだけでも十分な収穫ですが、実はまだあります。 

Karakaneito1
 カラカネイトトンボ♂

 これも、道東の釧路湿原などに生息するカラカネイトトンボです。写真ではわかりづらいですが、体長は約3センチと、イトトンボ類の中ではかなり小型です。帰り際に見たルリイトトンボ(体長約4センチ)が大きく見えたほどでした。

Karakaneito2

 何より驚いたのは、この金属光沢。アオイトトンボ類に似た雰囲気が醸し出されており、体の大きさも相まって実に神秘的なトンボです。

Yotubosi
ヨツボシトンボ♂:羽化

 この日は、観察できた種が多かっただけでなく初見のトンボばかりで、時間の経つのがあっという間でした。先にも書いた通り、道東には釧路湿原などのトンボにとって良い環境が広く点在していますが、範囲が広すぎる上に水の深い場所がほとんどなので、多くの種類が一度に見られ、そこへ足を運べる(車・歩きで安全にアプローチできる)場所というのは限られている気がします。それも、広大な湿原環境において、エゾカオジロトンボなどが生き残っている理由の一つなのかもしれません。

釧路湿原 2019年6月18日

 大型連休の折。大学の先輩と共にヒメギフチョウを探しに道北を旅したばかりですが、まだその記憶が覚めやらぬ頃に、今度は「道東でも採集するから来い!(=泊めろ!)」という招集がありました。
 ヒメギフチョウの折に、「もしかしたら一ヵ月後に道東へ行くかも」という不穏なコメントを残して帰って行ったのですが、まさか本当に来るとはと思った反面、私がかつて山梨に住んでいた時には、朝の4時に叩き起こされて採集に付き合ったり、二週連続で採集のため家に転がり込んだ事があったので、然もありなんというところでしょうか。それを承諾する私も、どうかしているのかもしれませんが。
 という訳で、今回は現在のフィールド近辺にて先輩の採集に付き合って来ました。
Ooyamaodamaki
 オオヤマオダマキ

Shirosumire
シロスミレ

Chisimahuuro
チシマフウロ

 採集の道すがら、寒冷地らしい花が目に止まりましたが、これは今回の目当てのチョウとは関係ありません。

Mitubatuchiguri
 ミツバツチグリ

 関係大有りなのはこちら。ミツバツチグリです。チョウ屋さんならば、すぐにピンと来る事でしょう。

Cyamadaraseseri1
チャマダラセセリ

 そう、今回のお目当てはチャマダラセセリです。昨年、別の場所で偶然にも確認していましたが、今度はそれとはまた別の、加えて私も何度か通り過ぎた事がある場所でした。家の近所に珍種が生息しているとは、これも北海道ならではの環境の良さなのかもしれません。

Cyamadaraseseri2
 
 滞在中の天気は悪くなかったのですが、個体数はやや少なく発生初期の段階でした。方や、少なかったと言いつつも、数が激減している本州の産地と比較したら多い方だそうで、おそらく広く浅く点々と生息しているようです。生息環境が何となくわかったので、今後それらしき場所を見つけたら、車を止めて見てみる必要がありそうです。

 ちなみに今回、先輩は3泊4日の行程で来ていたので、連日採集に明け暮れて大手を振って帰って行くかと思いきや、3日目は前夜の酒盛りが祟って二日酔いでダウンしていました。帰宅後のメールで、「来年リベンジに行く!」というこれまた不穏なコメントが書かれていた事は、言うまでもありません。

弟子屈町 2019年6月1日 

このページのトップヘ