蜻蛉の手帳

北海道東部を拠点に、昆虫のトンボを中心とした観察記録・写真を掲載しています。 なお、某有名文房具とは一切関係ございません。

 道北のヒメギフチョウ採集旅行の続きです。ヒメギフチョウを追いかける先輩を尻目に、カメラ片手に各地で植物観察もしていました。
Engosaku&Kikuzaki
 エゾエンゴサクとキクザキイチゲ(左の白い花)

Engosaku&Kibana
エゾエンゴサク(左)とキバナノアマナ(右)

Naniwazu&Enreisou
ナニワズ(上)とエンレイソウ(下)

Ryukinka
エゾノリュウキンカ

Katakuri
カタクリ

 ヒメギフチョウの生息地では、上記の花々、いわゆるスプリング・エフェメラル(春の妖精or儚い命)に該当する植物が咲き乱れていました。特に、エゾノリュウキンカは早春の北海道ならではの花なので、この花で吸蜜しているヒメギフチョウの姿は、正に『北海道らしい』写真となるそうです。と言っても、ヒメギフチョウの吸蜜時間は短いので、素人がそう簡単に撮れる代物ではありませんでした。むしろ、『撮る』前に先輩に『採られて』いましたので。

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Kitamifukujyu3
キタミフクジュソウ?

 計らずも良い発見(?)だったのが、このキタミフクジュソウと思われる花です。『がく片が花弁よりも長い』とか『出始めの花茎の色がより赤い』など、微妙な違いでなので、「フクジュソウと何が違うんだ??」と言われたらそれまでですが、、、。
 道東よりも春が少し先に来ているので、咲き乱れる花々を見ていると、何だか心が高揚してきます。 

旭川市内および周辺地域各所 2019年4月28・29日 

 今年の大型連休は何をするかとても迷いますが、前半は大学の先輩からの招集を受けて、道北部へと春のチョウを探しに行って来ました。

 当初の予定では、連休中に先輩と共に東南アジアのラオスへと採集旅行をする予定だったのですが、準備を進めていた段階で、ラオスおよび周辺地域が『口蹄疫』の危険地域だという事が判明しました。実は、現在の私の職業が少なからず家畜に関わるという事もあり、様々な状況を鑑みて危険性が非常に大き過ぎるため、見送る事になったという訳です。あと、現地の今頃の日中の気温は40℃前後らしいので、仮に行ったとしても北海道仕様になりつつある私は、干物になっていたかもしれません。
 結果として、飛行機や宿の予約・現地のガイドとの交渉等で、先輩や友人に迷惑をかけてしまったと同時に、現在の自分の立場に対する理解不足が露見したという顛末です。少々複雑な発端ではありますが、この様な経緯で道北採集旅行が持ち上がりました。



 去る平成31年の4月26日。上記のラオス採集旅行の名残で、お互い1日早く休みを取っていたので、先輩とは旭川空港で合流する事になりました。 今回私は、『ラオスの罪滅ぼし』という事で旅行中の運転手を志願したので、道東から旭川空港まで自家用車を延々転がして行きましたが、例によって道内の道路は走り易いので、片道5時間でもストレスを感じないのが良い所です。
 しかし、肝心の天気が悪く、26・27日は低気圧の影響で道内は曇りもしくは雨で、特に26日の夜に至っては雪となりました。これでは目当てのチョウは影も形も無いので、丸2日とも現地の下見で、夜は酒盛り(やけ酒?)でした。 

 そして、明くる28日。空は前日とは打って変わって、気持ちの良い快晴です。

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Okuezosaisin
 オクエゾサイシン

 まずは、前日までの下見で一番脈がありそうな場所へ直行し、先輩曰く「ここは吹き上がって来るぞ」という丘の上に陣を張りました。太陽と共に気温が上がり始める中、目当てのチョウの食草などを眺めながら待っていると、それは突然に姿を現しました。
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ヒメギフチョウ(エゾヒメギフチョウ)

 これぞ、”春の女神”もしくは”春の妖精”こと、蝶屋さん方の間で人気の高いヒメギフチョウです。標本はこれまでに何度か見た事がありましたが、生きている姿を見たのは今回が初めてです(という話を先輩にしたところ、「えぇ!?」と絶句していました)。

 春先のまだ薄ら寒い時期に現れるだけあって、体がふわふわの毛に覆われていて、中々かわいいです。また、虎を連想させる派手な縞模様(段だら縞)にも関わらず、地面に降りると見失う事がしばしば有りました。雪解け間もない頃だと、地面に積もった枯葉やその照り返しがあるので、一見すると派手に思える模様でも、意外と迷彩効果があるものですね。
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 (上と同じ個体)

 この日、気温はある程度高かった一方で、やや冷たい風が散発的に吹いたため、乱舞というほどではありませんでしたが、丘の上には読み通りヒメギフチョウが次々と吹き上がって来ました。
 先輩はというと、傾斜が45度近い場所があるにも関わらず、半ば滑り落ちながらもほぼ全てを網に納めており、撮影&見張り役をしていた私は、その姿を後ろから見ながら「えぇ、、、」と絶句していました。

 そして、落ちながらも見事にヒメギフチョウを網に納め、陣に戻って来た先輩が真っ先にやっていた事が、胸押し(締め)でも、三角紙を取り出す事でもなく、マダニチェックです。 と言うか、ほぼ2〜3分おきに足にマダニが這っていないか確認していたので、マダニ恐怖症レベルでした。流石に気にし過ぎではないか? と思ったのですが、それを言う度に、

先)「何でお前は冷静なんだ! 俺は前に大事なところをやられたぞ!」
私)「そんな事言ってたら、北海道で虫採りできませんよ」 

というやり取りが、割と頻繁に繰り返されていました。
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 ヒメギフチョウの卵

 マダニに怯えながらも、なんだかんだでそれなりの成果を納めて帰路に着く途中。陽当たりの良い斜面にぽつんと生えていたオクエゾサイシンを見て、先輩が「もしかしたら卵があるかもしれない」と言っておもむろに探し始めました。そんな簡単に見つかる物なのかなぁと思いつつ、私は近くの草花にカメラを向けようとしていたのですが、その矢先に「あった!」という声が。流石、長年の経験から来る予測は素晴らしい物です。
 お蔭で、無事に卵まで見る事が叶いました。瑞々しい緑色の葉裏に産み落とされた光景は、正に真珠の様です。
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オツネントンボ♂(上)・♀(下) 
 
 さらに、今回はヒメギフチョウを待つ間に予想外かつ幸運にもオツネントンボの姿を拝めました。付近にごく小さな細流と湿地があったので、おそらくそこで発生していたと思われます。道東の水辺でも、そろそろ姿を現す頃なので、ようやく今年のトンボシーズンの幕が上がりそうです。

旭川市 2019年4月28日 

 以前のココログと比べて、livedoorブログが格段に使い勝手が良いので、気持ち・装いも新たに、こちらを本格的に使い始める事にしました。この数年、各地を転々として来た身としては、新居に引っ越したばかりで何も無い部屋にいるのと似た感じがあります。
 という訳で、改めまして今後とも蜻蛉の手帳を宜しくお願いします。


 道東は、桜が咲くまであと一ヶ月ほどかかりますが、先日の暖気のお蔭で一気に春めいてきました。
Ezoengosaku1
Gyoujyaninniku
春の野山の草花
(エゾエンゴサク、フクジュソウ、ギョウジャニンニク)

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ビロウドツリアブ 

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アカマルハナバチ(女王)

 暖かさに誘われて、フクジュソウやアキタブキに続いてエゾエンゴサクも咲き始め、ビロウドツリアブやアカマルハナバチが花々を飛び回っていました。花の開花も然ることながら、昆虫が動き始めると一気に春を感じます。

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エゾエンゴサク:白色

Ezoengosaku2

 白色のエゾエンゴサクが一株だけ咲いており、名残の雪を思わせる様な可憐な姿でした。

 また、トンボシーズンに向けての腕慣らしも兼ねて、年末に購入した魚眼レンズをなるべく使うようにしているのですが、扱いが中々難しいですね。思っている以上に視野が広いので、今回の様に陽射しが強い時は、自分の影が写り込まないようにかなり気を使います。今までとは違う世界観で撮影ができるようになった分、被写体との距離感をこれまで以上に意識する必要がありそうです。
 とは言え、久々に見る生き生きとした草花と昆虫たちを前に、季節の進みを大きく感じた一時でした。 

弟子屈町 2019年4月21日




 ところで、先日の夜にお風呂に入ろうと湯船を確認しにいった時、中に先客がいました。


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たわし? 毛玉??

 湯船の中でうずくまっていたのは、たわしでも毛玉でもなく、なんと野生のエゾヤチネズミです。しばらく様子を伺っていたら、ただならぬ気配を感じて動き始めたのですが、その動きがなんともかわいい! いや、そんな事はともかく、この後どうするかと扱いに迷った挙げ句、結局は愛用の捕虫網に放り込んで野に放ちました(ちなみに、エキノコックスの中間宿主なので、この後即行でお風呂掃除をした事は言うまでもありません)

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