Gozentatibana
ゴゼンタチバナ

 季節の変化は小さなところにふと現れますが、頭上に生い茂る木々の葉よりも早く、足元のゴゼンタチバナが既に秋の装いに変わっていました。

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 ミヤマアカネ:産卵

 今回は、いつも様子を見ている森の中の水辺へと久々に足を運びました。この水辺は、森の一角から出た湧き水によって水位が年中確保されており、今年は雪不足によって周囲の湿地が干上がる中で、ここだけは奇跡的に水位が保たれていました。また、湧き水によってわずかながら流れが発生しているので、流水環境にも生息するミヤマアカネがこの場所で多く見られるというのも面白い点です。
 この日は、奇跡的な湧き水と台風一過の晴れ間が合わさり、ミヤマアカネがそこかしこで入れ替わり立ち代わり産卵を行っていました。

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 今回観察した限りでは、ミヤマアカネの多くのペアが水際に繁茂していたミズゴケ属の一種、特に水没したミズゴケを選んで産卵を行っている様に見えました。生態の通例としては、水面や泥などでも産卵を行うとの事なので、水域にこれら解放的な水面や泥があったにも関わらず、あえてミズゴケを選んでいた様にも見えます。

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 水際に繁茂していたミズゴケ属の一種

 ミズゴケ自体は水分を溜め込みやすい特性があり、園芸分野でも例えばランなどの栽培には欠かせない植物として重宝されています。湧き水によって水位が確保されている水域とはいえ、万が一の場合を考慮したら、保湿力の高いミズゴケに卵を付着させる行動は得策かもしれません。誰に教わった訳でもなしに、空間をこれだけ把握して行動しているのはやはり驚かされます。

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 胞子のうを付けたミズゴケ属の一種(7月)

 ところでこのミズゴケ、特に北海道の湿地環境においては高層湿原を形成している植物の一種で、淡水域では必ずと言っていいほど目にします。7月に、同じ水辺を訪れた際には胞子のうを付けた状態の物を見たのですが、陽の光を受けてなのか、あるいは湿度の変化によるものなのか、至るところで微かな「パチッ」という音と共に胞子が弾けていました。
 トンボ達にとって(他の生きものにも)重要な役割を果たしているかもしれないミズゴケが、ミヤマアカネのお陰で更に近い存在となりました。 

弟子屈町 2019年9月24日