蜻蛉の手帳

北海道東部を拠点に、昆虫のトンボを中心とした観察記録・写真を掲載しています。 なお、某有名文房具とは一切関係ございません。

2019年05月

 季節外れかつ観測史上最高気温が次々と記録された北海道ですが、朝晩は半袖だと肌寒く、道東では夜に窓を開けて寝られない程です。そんな暑い日ではありましたが、この気温でトンボが出ているのではと思い水辺の様子を見てきました。
Ezonotachitubo
エゾノタチボスミレ

Tumatorisou
ツマトリソウ

 水辺までの道すがら、エゾノタツボスミレやツマトリソウが咲いていました。昨年より少し早いかもしれません。

Yotubosi
ヨツボシトンボ♀

 水辺に着くと、早速ヨツボシトンボが出迎えてくれました、、、が、よく見れば羽化不全で右後翅がありません。羽化から間も無い状態だったので、完全に乾いたら少しは飛べると良いのですが。

Kitaito1
 キタイトトンボ♂

Kitaito2
 キタイトトンボ♀(未熟個体)

 草むらでは、様々な成熟段階のキタイトトンボが群れていました。図鑑を開く度、北海道にしか分布していないという事を思い出しますが、自分にとっては既に馴染みのトンボになりつつあります。この水辺は、近隣から持続的に水が供給されているためか、トンボの発生については今年も問題なさそうです。

Ezohanmyoumodoki1

 観察中、装着していた胴長に小型の甲虫が歩いていたのですが、ポトリと地面に落ちた姿をよく見れば、これは、、、もしや、、、!

Ezohanmyoumodoki2
 エゾハンミョウモドキ

 なんと、エゾハンミョウモドキです。宝石を散りばめたような翅が何とも素晴らしい! 生息地が湿地という事で、トンボ探しの時にその内見れたら良いなぁ程度に思っていたのですが、まさか自分の胴長に付いているとは。というか、近所に生息していたとは!
 姿がどことなくハンミョウに似ていますが、分類的にはゴミムシの方に近いとの事です。大概、「〜モドキ」という名の生物は珍しい種が多いような気がしますが、例に違わず本種も比較的珍しいようなので、偶然とは言え思わぬ収穫でした。

Ugui
ウグイの産卵

 帰り際、川辺の様子を見に行ったところ、岸辺でウグイの産卵が繰り広げられていました。川を含め、相変わらず水の少なさが気になりますが、その分安定した水量が保たれている水辺にトンボが集中するかと思うので、今後の天候と合わせて注視して行きたいところです。

弟子屈町 2019年5月25日 

 道東に、ようやく春がやって来ました。
hill
Ezoyamazakura

 灰色がかった野山に、キタコブシやエゾヤマザクラの白色や薄桃色が加わり、鮮やかさが増して来ました。

Katura
 カツラの若葉

Miyamakatabami
コミヤマカタバミ

Oobananoenreisou
オオバナノエンレイソウ

Simahebi
シマヘビ

 若葉や花々に彩られて賑やかになって来ましたが、一つ気になる事が。冬場の雪が例年よりとても少なかったため、雪解け水の量も必然的に少なく、雨水由来の湿地がカラカラの状態です。昨年の春先に、オツネントンボを観察した湿地も全く水が無いためトンボの気配が皆無で、今年のトンボの発生にかなりの影響が出そうです。 

弟子屈町 2019年5月13・19日 

Nihontokage
 日向でまどろむヒガシニホントカゲ

 連休の最終日。春を通り越して初夏を思わせる陽気の中、近所の動植物の様子を見て来ました。

Himeichige1
Himeichige2
 ヒメイチゲ

 木漏れ日が差し込む薄明るい林床に、この時期ヒメイチゲがぽつぽつと咲き始めます。木の根元や苔の間から顔を覗かせている物が多い気がしますが、名前と大きさも相俟って妖精みたいです。

Himeichige3

 中には、高さ5センチにも満たないかわいらしいヒメイチゲ、、、の横にエビフライ?

Ebifry
森のエビフライ(エゾリスの食跡)

 勿論、本物のエビフライな訳は無く、エゾリスがマツ類の球果を食べた痕です。それにしても、見事なまでのエビフライ。

弟子屈町 2019年5月4日 

 道北ヒメギフチョウ採集の最後の記録、、、と言うか”おまけ”です。

Ezoaka&Ezosan
エゾアカガエル(前)・エゾサンショウウオ(奥)の卵塊

 ヒメギフチョウを探して山奥の林道を歩いていたところ、側溝にたまった水の中で弱肉強食の静かなドラマが繰り広げられていました。

Ezoakagaeru
エゾアカガエルとその卵塊 (上とは別)

 早春の北海道の水辺の風物詩とも言えるのが、このエゾアカガエルとその卵塊です。わずかな期間だけですが、甲高い鳴き声と共に至るところで蛙合戦が繰り広げられています(ちなみに、上の写真には『12匹』隠れています。全部わかったら、あなたは蛙マスター!) 。

Ezosansyouuo
 エゾサンショウウオの卵塊

 そして、エゾアカガエルと同じ環境に産卵を行うのが、このエゾサンショウウオ。両種共に産卵の時期は同じなのですが、エゾサンショウウオの方がやや早く孵るようで、後から孵化したエゾアカガエルの幼生を食べてしまいます。一方のエゾアカガエルも、無防備に食べられるだけではありません。エゾサンショウウオと同所の水域に生息する幼生は頭部が大型化する傾向があり、これにより飲み込まれにくくなるため、捕食されるのを回避しているのではないかとされています。
  小さな水溜まりの中でも、強かな攻防戦があるようです。

Simarisu
エゾシマリス

 採集に専念できたのは2日間だけでしたが、お互いの近況や思い出話に花咲かせつつ、久々に学生時代の気分に戻れた一時でした。

エゾアカガエル・エゾサンショウウオ:名寄市 2019年4月29日
エゾシマリス:苫小牧市 2019年4月30日 

 道北のヒメギフチョウ採集旅行の続きです。ヒメギフチョウを追いかける先輩を尻目に、カメラ片手に各地で植物観察もしていました。
Engosaku&Kikuzaki
 エゾエンゴサクとキクザキイチゲ(左の白い花)

Engosaku&Kibana
エゾエンゴサク(左)とキバナノアマナ(右)

Naniwazu&Enreisou
ナニワズ(上)とエンレイソウ(下)

Ryukinka
エゾノリュウキンカ

Katakuri
カタクリ

 ヒメギフチョウの生息地では、上記の花々、いわゆるスプリング・エフェメラル(春の妖精or儚い命)に該当する植物が咲き乱れていました。特に、エゾノリュウキンカは早春の北海道ならではの花なので、この花で吸蜜しているヒメギフチョウの姿は、正に『北海道らしい』写真となるそうです。と言っても、ヒメギフチョウの吸蜜時間は短いので、素人がそう簡単に撮れる代物ではありませんでした。むしろ、『撮る』前に先輩に『採られて』いましたので。

Kitamihukuhyu1
Kitamifukujyu3
キタミフクジュソウ?

 計らずも良い発見(?)だったのが、このキタミフクジュソウと思われる花です。『がく片が花弁よりも長い』とか『出始めの花茎の色がより赤い』など、微妙な違いでなので、「フクジュソウと何が違うんだ??」と言われたらそれまでですが、、、。
 道東よりも春が少し先に来ているので、咲き乱れる花々を見ていると、何だか心が高揚してきます。 

旭川市内および周辺地域各所 2019年4月28・29日 

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