カテゴリ: 植物
冬開始への秒読み
ストーブ点火
青い妖精
湿地代表
ヒメアカネは特に湿地環境を好むアカネ属(赤トンボ)ですが、湿地ならばどこでも良いという訳でもなく、植物がそれほど高く繁っておらず、泥がある程度上から見える様な湿地、つまりは放棄水田の様な湿地化して間もない環境が好みの様です。
道内の特に道東では湿地環境に事欠きませんが、『湿地』と一口に言っても実は意外と多彩です。
ミズゴケが絨毯の様に広がる湿地なのか、厚い泥炭の上にカヤツリグサ科やイネ科の植物が低く茂っているのか、あるいは背丈を越すヨシの群落に覆われているのか、浮島があるのか、水量の多・少など、この数年に見て来た道東の湿地環境だけでもかなり多様性に富んでいます。
かつて活動していた本州とは状況が異なる場面も多いので、『こんな環境にこのトンボがいるのか!』と驚く事は日常茶飯事です。
エゾトンボ♂:パトロール飛翔
エゾトンボ♀:休止
忘れがちながら、このエゾトンボも湿地環境が好きな一種です。
道内では、車での移動中に100mごとにフロントガラスにぶち当たるほどたくさんいますが、その理由の一つも湿地の多さが関係しているのでしょう。
湿地でよく見られるサワギキョウ
湿地・湿原という環境は、自然環境の移り変わり(遷移)においてはとても不安定で、本来ならばすぐに乾燥化して草原や林になるのが常です。
しかし北海道は、寒冷な気候のため枯れた植物が分解されにくく、特に淡水域ではそうした植物が腐らずに積み重なって分厚い泥炭を形成しています。結果として土壌の生成も遅くなるだけでなく、夏場でも高温の日がわずかなので、乾燥化が非常に緩やかになります。その上、ある程度遷移が進んでいたとしても、大雨や嵐で川の水量が増せば撹乱され場合によっては振り出しに戻るので、より湿地としての期間が長くなります。
改めて、日本で北海道にのみ or 特に北海道に多く分布するトンボの生息環境を確認してみると、湿地や湿原・高層湿原となっています(カラカネイトトンボ、イイジマルリボシヤンマ、エゾアカネなど)。
本来ならばすぐに消えてしまう環境が気候条件によって維持され、しかも広大な面積が確保されているという事が、北海道特有の種が生きながらえて来た理由に関わっているのかもしれません。
釧路湿原 2020年8月23日