蜻蛉の手帳

北海道東部を拠点に、昆虫のトンボを中心とした観察記録・写真を掲載しています。 なお、某有名文房具とは一切関係ございません。

2020年06月

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ホンサナエ♂

エゾカオジロトンボ祭り見物の翌日、知り合いの虫屋さんからホンサナエがたくさんいると聞いていた水辺に向かいました。すると出し抜けに発見し、見れば汀で目を光らせるオスの姿が点々と見えます。
歩いて確認した約500メートルほどの範囲だけでも、40個体前後いました。

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個体数が多かった事も幸いしてか、中にはかなり近距離まで寄らせてくれるオスもいたので、広角撮影もこの通りです。

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ホンサナエ♂:パトロール&探雌飛翔

一つ面白かったのが、夕方近くになると多くのオスがホバリング気味に水面近くを飛行する行動を頻繁に行っていた事です。

以前に、オナガサナエのオスが早朝の川面でホバリングを行いながらメスを待つ光景を見た事がありましたが、ホンサナエも似たような行動を取るとは知りませんでした。
また、この日は計5時間水辺で行動を見ていたのですが、その間にメスが現れたのはわずか3回。しかもその内の2回は、オスに捕捉されて連れ去られ、産卵に成功していたのは1回だけでした。それも、オスの密度が一時的に薄くなった瞬間を見計らうかのようにパッと現れ、打水産卵後にすぐさま上空に離脱するという早技で、その間はわずか3〜4秒!?

メスに出会うのは、なかなかに難しそうです。

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水面を凝視するオジロワシ

陽も傾き、そろそろ引き上げようかと荷物をまとめ始めた時、水面上空にオジロワシが現れ、何やら下を凝視した後に飛び去りました。

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水面を泳いで横断するエゾシカ♀

オジロワシの目線の先を辿ると、なんとそこには水域を泳いで横断するエゾシカが。対岸へ行くために、岸辺を回り込まずに近道して泳いで来たようです。
当のエゾシカは「なんでこんなところにいるの!?」という目線を向けていますが、こっちも同じ心境です。エゾシカはこの後無事に上陸し、私に一瞥くれると森の中に消えて行きました。

ホンサナエの乱舞という素晴らしい光景と共に、シカも近道するのだなぁと、面白い事の多い一日でした。 


釧路湿原 2020年6月14日 

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ヨツボシトンボ♂

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エゾイトトンボ:産卵

エゾカオジロトンボと同じ場所に、ヨツボシトンボとエゾイトンボもいたのですが、エゾカオジロトンボがあまりにも多すぎるため、隙間を縫うように細々と飛んでいました。
エゾイトトンボはともかく、ヨツボシトンボと言えば北海道の水辺では主の如くに飛び交う種類なので、それが影を潜めるほどの個体数だった事は改めて圧巻の一言に尽きます。

Ezosukasiyuri
エゾスカシユリ

Futamataichige
フタマタイチゲ

植物も晩春から初夏の花に移り、これから水辺の賑やかさも増しそうです。


釧路湿原 2020年6月13日 

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エゾカオジロトンボ♂

昨年は姿を拝むだけで終わったエゾカオジロトンボですが、今年は朝から現場に張り込み、
じっくりと観察を行いました。

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エゾカオジロトンボ:交尾

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エゾカオジロトンボ♀:産卵

昨年と変わらずにエゾカオジロトンボがもの凄い数で、視界に入るトンボの9割がエゾカオジロトンボ(残り1割はヨツボシトンボ)というお祭り状態でした。

終日観察をしたところ、水辺に訪れるメスの数が少なかったためか、見つかり次第すぐさまオスに捕捉されており、非常に疲弊しているように見えました。と言うのもの、交尾後に他のオスに捕まらなければそのまま産卵に移行していたのですが、最初は飛び上がるのも辛そうにヘタりこむメスばかりで、力を振り絞ってどうにか産卵を始めたくらいに、別のオスに捕まってしまうという状況ばかりでした。

産卵行動は午前から午後にかけて散発的に確認できたのですが、安定して産卵を行えていたのはわずかで、オスがいい加減に疲れてくる午後になると、産卵を長めに行っていたように思えます。

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エゾカオジロトンボ:A型3連結(上から ♂ー♂ー♀の連結)

頻繁に見られたのがこの3連結帯。日本のトンボ(文一総合出版)のエゾカオジロトンボの頁にも『3連結帯が頻繁に観察される』との記述がありますが、30分に1回の頻度で確認できるほどでした。
この状況から見ると、エゾカオジロトンボのオスは動くものがあれば雌雄や別の種に関わらずとりあえず突撃して、『メスだったらラッキー!』という感じなのかもしれません。


釧路湿原 2020年6月13日 

 ヒグマ生息地の強行突破から一週間後、林道の入り口を改めて確認したところ開通していたので、今回は安全かつ迅速な車で現地まで向かいました。
 やはり車移動なら10分で到着したので、30℃近い気温の中を1時間歩いた事がただの苦行としか思えません。 

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コサナエ♀:羽化

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上陸途中の幼虫
 
 水辺を再び見て回ると、早朝から羽化を行っていた数個体と共に、上陸途中と思われる幼虫を運よく発見。羽化のピークは過ぎているはずですが、出遅れた個体がいた事に安心しつつも、この日は昼過ぎから天気が崩れる予報だったので、早く羽化を始めてくれと祈りながら待ちました。

、、、が。この幼虫、かなり用心深いのか優柔不断なのか、発見時から約2時間近くの間に停止と移動を繰り返すばかりで、一向に落ち着く気配を見せません。そうこうする内に、水面には冷たい風が吹き付け始め、空を見上げれば灰色の雲の塊が迫ってきます。

ついには、ポツポツと帽子に当たる雨粒の音。そして、荷物を木陰に避難させている最中に、跡形も無く姿を消す幼虫!? どうやら、羽化を取りやめて水中に戻ったようですが、羽化の雨天中止現場に立ち会うとは思いもしませんでした。

Aodaisyou

「また来年に持ち越しだね」by アオダイショウ


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 『林道開通が一週間遅いぞ』とか『ヤゴが優柔不断だったから』とかの言い訳は置いておくとして、まさかの持ち越し二年目になりそうです。


弟子屈町 2020年6月6日 

Mitubaourenn
ミツバオウレン 

Kotubame
コツバメ

 5月だというのに気温が30℃近くまで上がり、トンボシーズン開幕の第二弾として、昨年やり残したコサナエの羽化を拝みに行く事にしました。

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コサナエ♀:羽化

 という感じで、無事成功したかのように思えますが、実は水域まで繋がる林道の入り口が閉鎖されているという問題が発生し、車であれば10分くらいで到着するところ、仕方がないのでヒグマ生息地の真っ只中を片道1時間歩いて強行突破しました。

 爆竹と熊スプレー片手に延々と歩き、ヒグマには遭遇しませんでしたが、途中でキツツキのクマゲラを3回も目撃するもそれすら振り切り水域に駆けつけると、羽化の最終段階にギリギリ滑り込む事ができました。車での移動が叶えばおそらく上陸から立ち会う事ができたと思いますが、最低限の目標を達成したので一安心というところです。

弟子屈町 2020年5月30日

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